事業支援研究所

雇用対策とホームページの活用

妊娠・出産・育児休業に関するハラスメント対策とは【解説ハンドブック付き】

ハラスメント対策

各種のハラスメントの内、妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントについて、その対応はお済みでしょうか?

「完全ではないかもしれないが行っている」はずという、ちょっと残念な状態が多いようです。

そこで、今回の記事では「妊娠・出産・育児休業に関するハラスメント対策」について改めて解説をしていきます。

既に実施している企業の方は再確認として、まだ着手していない企業の方は情報の収集として、お読みください。

✓ 企業経営者(労務担当者)の悩み

  • 妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントとは何か?
  • 妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントの対策とは何をすればいいのか?
  • 具体的な妊娠・出産・育児休業に関するハラスメント対策の例を知りたい

こういった疑問に答えていきます。

✓ 本記事の内容

  • 妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントとは?
  • 妊娠・出産・育児休業に関するハラスメント対策とは?
  • 具体的な妊娠・出産・育児休業に関するハラスメント対策の内容

この記事を書いている私は、経営コンサルタントを10年以上やっており、働き方改革や雇用対策のコンサルティングも3年以上の実績があります。また、行政書士でもあるため、労務関係を取扱う社会保険労務士とのコラボも数多く行っています。法律に沿った内容だけに留まらず、企業の生産性を向上し、収益の増大を目指すコンサルを実施しています。こういった私が、解説していきます。

妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントとは

ハラスメントの定義

妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントとは、職場において行われる、上司・同僚からの「妊娠・出産したことや、育児休業の利用に関する言動」により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業を申出・取得した「男女労働者」等の就業環境が害されることです。

ちなみに、女性労働者に向けた妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントについては、マタニティハラスメント(マタハラ)、男性労働者に向けたハラスメントについては、パタニティハラスメント(パタハラ)とも呼ばれています。

職場の定義

「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所で、通常就業している場所以外でも、労働者が業務を遂行する場所であれば「職場」に該当します。

「職場」の例

  • 事務所
  • 製造場(工場)
  • 出張先
  • 業務で使用する車中
  • 取引先との打ち合わせ場所(接待の席などの飲食店を含む) など

尚、勤務時間外の「宴会」「懇親の場」などであっても、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に該当しますが、その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加が強制的か任意かといったことを考慮して個別に行う必要があります。

労働者の定義

「労働者」とは、正規雇用労働者(正社員)だけでなく、アルバイト・パートタイム労働者、契約社員などいわゆる非正規雇用労働者を含む、事業主が雇用する全ての労働者を指します。時間外労働とは違い、課長・部長などの管理監督者も含みます。

また、派遣労働者については、派遣元事業主だけでなく、派遣先事業主も、自ら雇用する労働者と同様に措置を講じる必要がありますので注意しましょう。

ハラスメントの例

妊娠や出産したこと、そのための社内の制度を利用したこと(しようとしたこと)、短時間勤務や就業制限をしたこと(しようとしたこと)、妊娠や出産を起因とする体調不良により通常業務ができないこと等について、ハラスメントとなるあらゆる言動が対象となります。

  • 上司に妊娠を報告したら、「他の人を雇うので早めに辞めてもらうしかない」と言われる
  • 産前休業の取得を上司に相談したら、「休みを取るなら辞めてもらう」と言われる
  • 時間外労働の免除について上司に相談したら、「次の査定の際は昇進しないと思え」と言われる
  • 育児休業の取得について上司に相談したら、「男のくせに育児休業をとるなんてあり得ない」と言われる
  • 介護休業について請求する旨を周囲に伝えたら、複数の同僚から「自分なら請求しない。あなたもそうするべき」と言われる
  • 上司や同僚が「所定外労働の制限をしている人には大した仕事をさせられない」と繰り返しまたは継続的に言い、専ら雑務のみをさせられる
  • 上司や同僚が「自分だけ短時間勤務をしているなんて周りを考えていない。迷惑だ」と繰り返しまたは継続的に言われる
  • 上司や同僚が「妊婦はいつ休むかわからないから仕事は任せられない」と繰り返しまたは継続的に言い、仕事をさせない状況にされる
  • 上司や同僚が「妊娠するなら忙しい時期を避けるべきだった」と繰り返しまたは継続的に言われる 等

ハラスメントに該当しない例

業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて「業務上の必要性」に基づく言動によるものはハラスメントに該当しません。例として、ある程度調整が可能な休業等(定期的な妊婦検診の日時など)について、その時期をずらすことが可能か「労働者の意向を確認する」といった行為などが挙げられます。

  • 業務体制を見直すため、上司が育児休業をいつからいつまで取得するのか確認する
  • 業務状況を考えて、上司が「次の妊婦検診はこの日は避けて欲しいが調整できるか」と確認する
  • 同僚が自分の休暇との調整をする目的で休業の期間を尋ね、変更を相談する

※ただし、制度等の利用を希望する労働者に対する変更の依頼や相談は、強要しない場合に限る

  • 上司が、長時間労働をしている妊婦に対して、「妊婦には長時間労働は負担が大きいだろうから、業務分担の見直しを行い、あなたの残業量を減らそうと思うがどうか」と配慮する
  • 上司や同僚が「妊婦には負担が大きいだろうから、もう少し楽な業務に変わってはどうか」と配慮する
  • 上司や同僚が「つわりで体調が悪そうだが、少し休んだ方が良いのではないか」と配慮する

※上記などの場合、妊婦本人にはこれまで通り勤務を続けたいという意欲がある場合であっても、客観的にみて、妊婦の体調が悪い場合は業務上の必要性に基づく言動となる

妊娠・出産・育児休業に関するハラスメント対策とは

妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントについては、男女雇用機会均等法第11条の2および育児・介護休業法第25条で、事業主にその防止措置を講じる義務が課されています。

また、妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントを防止するために、「事業主が雇用管理上講ずべき措置」が、厚生労働大臣の指針に定められています。

指針に定められているポイントは以下の通りです。

  • 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
  • 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  • 妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
  • 妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
  • 併せて講ずべき措置

事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

事業主は、妊娠・出産・育児休業に関するハラスメント防止に向けた下記の内容について、方針を明確化し、その周知・啓発に努めなければなりません。

  • 妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントの内容
  • 妊娠・出産・育児休業等に関する否定的な言動がハラスメントの発生の原因や背景となり得ること
  • 妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントがあってはならない旨の方針
  • 制度等の利用ができることを明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること
  • 妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること

相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

事業主は、妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントに適切に対応するために必要な体制の整備を整えなければなりません。

  • 相談窓口をあらかじめ定めること
  • 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること
  • 妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応すること
  • 妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントはセクシュアルハラスメントやパワーハラスメント等その他のハラスメントと複合的に生じることも想定されるため、あらゆるハラスメントの相談を一元的に受け付ける体制を整備すること

妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

事業主は、妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントが発生してしまった場合に、下記の迅速かつ適切な対応を取らなければなりません。

  • 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
  • 事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと
  • 事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと
  • 再発防止に向けた措置を講ずること

妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置

事業主は、妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するために、下記の対応を取らなければなりません。

  • 業務体制の整備など、事業主や妊娠等をした労働者その他の労働者の実情に応じ、必要な措置を講ずること
  • 妊娠等をした労働者も、制度等の利用ができるという知識を持ち、周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら自身の体調等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つことを周知・啓発すること

併せて講ずべき措置

事業主は、妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントの防止のために、上記の対策に併せて、下記の措置を講じなければなりません。

  • 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
  • 相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

具体的な妊娠・出産・育児休業に関するハラスメント対策の内容

妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントにおいて、「事業主が雇用管理上講ずべき措置についての指針」に定められている項目について、具体的な取組例についてお伝えします。

「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」に関する取組例

取組例1:ハラスメントの内容、方針等の明確化と周知・啓発

  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に、事業主の方針を規定し、当該規定と併せて、ハラスメントの内容およびハラスメント発生の原因や背景等を労働者に周知・啓発する
  • 社内報、パンフレット、社内HP等広報または啓発のための資料等にハラスメントの内容およびハラスメント発生の原因や背景並びに事業主の方針を記載し、配布等を行う
  • 妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントの内容およびハラスメント発生の原因や背景並びに事業主の方針を、労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施する

取組例2:行為者への厳正な対処方針、内容の規定化と周知・啓発

  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に、ハラスメントに係る言動を行なった者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発する
  • ハラスメントに係る言動を行なった者は、現行の就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、それを労働者に周知・啓発する

「相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」に関する取組例

取組例1:相談窓口の設置

  • 相談に対応する担当者を予め定める
  • 相談に対応するための制度を設ける
  • 外部の機関に相談への対応を委託する

取組例2:相談に対する適切な対応

  • 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みを構築する
  • 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、予め作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応する

「ハラスメント事後の迅速かつ適切な対応」に関する取組例

取組例1:事実関係の迅速かつ正確な確認

  • 相談窓口の担当者、人事部門または専門の委員会等が、相談者および行為者とされる者の双方から事実関係を確認する
  • 相談者と行為者とされる者の間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできない場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずる
  • 事実関係の確認が困難な場合等において、男女雇用機会均等法第18条または育児・介護休業法第52条の5に基づく調停の申請を行う、またはその他中立な第三者機関に紛争処理を委ねる

取組例2:被害者に対する適正な配慮の措置の実施

  • 事案の内容や状況に応じ、制度等の利用に向けての環境整備、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、行為者の謝罪、管理監督者または事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずる
  • 男女雇用機会均等法第18条または育児・介護休業法第52条の5に基づく調停、またはその他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を被害者に対し講ずる

取組例3:行為者に対する適正な措置の実施

  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書における妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントに関する規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずる
  • 男女雇用機会均等法第18条または育児・介護休業法第52条の5に基づく調停、またはその他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を行為者に対し講ずる

取組例4:再発防止措置の実施

  • 職場におけるハラスメントに係る事業主の方針およびハラスメントに係る言動を行った者について厳正に対処する旨の方針を、妊娠・出産・育児・介護に関する制度が利用できる旨を、社内報、パンフレット、社内HP等広報または啓発のための資料等に改めて掲載し、配布等をする
  • 労働者に対して職場におけるハラスメントに関する意識を啓発するための研修や講習を改めて実施する

「ハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置」に関する取組例

取組例1:業務体制の整備など、事業主や妊娠等をした労働者等の実情に応じた必要な措置

  • 妊娠等をした労働者の周囲の労働者への業務の偏りを軽減するよう、適切に業務分担の見直しを行う
  • 業務の点検を行い、業務の効率化などを行う
  • 妊娠等をした労働者の側においても、制度等の利用ができるという知識を持つことや、周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら自身の体調等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つこと等を、妊娠等をした労働者に周知・啓発すること

「併せて講ずべき措置」に関する取組例

取組例1:当事者などのプライバシー保護のための措置の実施と周知

  • 相談者・行為者等のプライバシー保護のために必要な事項を予めマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、そのマニュアルに基づき対応する
  • 相談者・行為者等のプライバシー保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行う
  • 相談窓口においては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、社内報、パンフレット、社内HP等広報または啓発のための資料等に掲載し、配布等を行う

取組例2:相談、協力等を理由に不利益な取扱いを行ってはならない旨の定めと周知・啓発

  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に、労働者が職場におけるハラスメントに関し相談をしたこと、事実関係の確認に協力をしたこと等を理由として、その労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発する
  • 社内報、パンフレット、社内HP等広報または啓発のための資料等に、労働者が職場におけるハラスメントに関し相談をしたことや、事実関係の確認に協力をしたこと等を理由として、その労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を記載し、労働者に配布する

繰り返しになりますが、妊娠・出産・育児休業に関するハラスメント対策は実施した方がよいというものではなく、必ずやらなければならないものなので、しっかりと確実に実行していきましょう。そのためにも、ハラスメントの内容とその対策についてしっかりと知ることが重要です。

当委員会では、ハラスメント全体についてさらに詳しく解説しているハラスメント情報ハンドブックを無料で配布しています。そしてまずは、現状を知るための無料簡易チェックリストによるチェックを行いましょう。どちらもコチラからダウンロードできます(PC推奨)。

このブログでは働き方改革や雇用対策に関するさまざまな記事を掲載していますので、そちらも是非読んでみてください。妊娠・出産・育児休業に関するハラスメント対策に関するご質問等がありましたら、コチラからお気軽にご連絡ください。ご相談ご質問については無料で対応しています。