事業支援研究所

雇用対策とホームページの活用

パワーハラスメント対策とは【解説ハンドブック付き】

パワーハラスメント対策

各種のハラスメントの内、職場におけるパワーハラスメントについて、その対応はお済みでしょうか?

法制化されてからまだあまり間がないため、「具体的な施策はこれから」という、ちょっと残念な状態が多いようです。

そこで、今回の記事では「パワーハラスメント対策」について改めて解説をしていきます。

既に実施している企業の方は再確認として、まだ着手していない企業の方は情報の収集として、お読みください。

✓ 企業経営者(労務担当者)の悩み

  • 職場におけるパワーハラスメントとは何か?
  • パワーハラスメントの対策とは何をすればいいのか?
  • パワーハラスメント対策の例を知りたい

こういった疑問に答えていきます。

✓ 本記事の内容

  • 職場におけるパワーハラスメントとは?
  • パワーハラスメント対策とは?
  • 具体的なパワーハラスメント対策の内容

この記事を書いている私は、経営コンサルタントを10年以上やっており、働き方改革や雇用対策のコンサルティングも3年以上の実績があります。また、行政書士でもあるため、労務関係を取扱う社会保険労務士とのコラボも数多く行っています。法律に沿った内容だけに留まらず、企業の生産性を向上し、収益の増大を目指すコンサルを実施しています。こういった私が、解説していきます。

職場におけるパワーハラスメントとは

ハラスメントの定義

職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)とは、職場において行われる、

  • 優越的な関係を背景とした言動であって、
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  • 労働者の就業環境が害されるもの

であり、以上3つの要素を全て満たすものをいいます。

尚、客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。

大企業では既に施行が始まっていますが、中小企業については、令和4年4月からの施行となります。しかし、法令の施行期日に関わらず、裁判では既に数多くの事例が企業側敗訴という形で決着していますので、早めの準備が必要です。

職場の定義

「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所で、通常就業している場所以外でも、労働者が業務を遂行する場所であれば「職場」に該当します。

「職場」の例

  • 事務所
  • 製造場(工場)
  • 出張先
  • 業務で使用する車中
  • 取引先との打ち合わせ場所(接待の席などの飲食店を含む) など

尚、勤務時間外の「宴会」「懇親の場」などであっても、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に該当しますが、その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加が強制的か任意かといったことを考慮して個別に行う必要があります。

労働者の定義

「労働者」とは、正規雇用労働者(正社員)だけでなく、アルバイト・パートタイム労働者、契約社員などいわゆる非正規雇用労働者を含む、事業主が雇用する全ての労働者を指します。時間外労働とは違い、課長・部長などの管理監督者も含みます。

また、派遣労働者については、派遣元事業主だけでなく、派遣先事業主も、自ら雇用する労働者と同様に措置を講じる必要がありますので注意しましょう。

ハラスメントの例

パワーハラスメントは、業務上の指示や指導との境界が見分けにくく、ハラスメントに該当するかどうかの判断に当たっては、その言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、言動の内容や継続性、労働者の心身の状況や行為者との関係性等、さまざまな点について総合的に考慮する必要があります。

そのため、法令に基づく指針について、以下の6つの代表的な言動の類型を定義・分類しています。

  • 身体的な攻撃
  • 精神的な攻撃
  • 人間関係からの切り離し
  • 過大な要求
  • 過小な要求
  • 個の侵害

それぞれの類型について、代表的な例は以下の通りとなります。

身体的な攻撃(暴行・傷害)

  • 殴打、足蹴りを行う
  • 相手にものを投げつける

精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)

  • 人格を否定するような言動を行う(相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を含む)
  • 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う
  • 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行う
  • 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を、当該相手を含む複数の労働者宛に送信する

人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

  • 自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりする
  • 一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる

過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)

  • 長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずる
  • 新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し激しく叱責する
  • 労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせる

過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

  • 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる
  • 気に入らない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えない

個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

  • 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりする
  • 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機敏な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露する

パワーハラスメント対策とは

職場におけるパワーハラスメントについては、労働施策総合推進法第30条の2で、事業主にその対応整備と防止措置を講じる義務が課されています。

また、パワーハラスメントを防止するために、「事業主が雇用管理上講ずべき措置」が、厚生労働大臣の指針に定められています。

指針に定められているポイントは以下の通りです。

  • 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
  • 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  • 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
  • 併せて講ずべき措置

事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

事業主は、職場におけるパワーハラスメント防止に向けた下記の内容について、方針を明確化し、その周知・啓発に努めなければなりません。

  • 職場におけるパワーハラスメントの内容
  • 職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化
  • 事業主の方針等を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること
  • 職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針および対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること

相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

事業主は、職場におけるパワーハラスメントに適切に対応するために必要な体制の整備を整えなければなりません。

  • 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
  • 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること
  • 職場におけるパワーハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、パワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応すること

職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

事業主は、パワーハラスメントが発生してしまった場合に、下記の迅速かつ適切な対応を取らなければなりません。

  • 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
  • 事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと
  • 事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと
  • 再発防止に向けた措置を講ずること

併せて講ずべき措置

事業主は、職場におけるパワーハラスメントの防止のために、上記の対策に併せて、下記の措置を講じなければなりません。

  • 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
  • 相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

具体的なパワーハラスメント対策の内容

職場におけるパワーハラスメントにおいて、「事業主が雇用管理上講ずべき措置についての指針」に定められている項目について、具体的な取組例についてお伝えします。

「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」に関する取組例

取組例1:ハラスメントの内容、方針等の明確化と周知・啓発

  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に、事業主の方針を規定し、当該規定と併せて、ハラスメントの内容およびハラスメント発生の原因や背景等を労働者に周知・啓発する
  • 社内報、パンフレット、社内HP等広報または啓発のための資料等にハラスメントの内容およびハラスメント発生の原因や背景並びに事業主の方針を記載し、配布等を行う
  • ハラスメントの内容およびハラスメント発生の原因や背景並びに事業主の方針と、制度等が利用できる旨を、労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施する

取組例2:行為者への厳正な対処方針、内容の規定化と周知・啓発

  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に、ハラスメントに係る言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発する
  • ハラスメントに係る言動を行った者は、現行の就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、それを労働者に周知・啓発する

「相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」に関する取組例

取組例1:相談窓口の設置

  • 相談に対応する担当者を予め定める
  • 相談に対応するための制度を設ける
  • 外部の機関に相談への対応を委託する

取組例2:相談に対する適切な対応

  • 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みを構築する
  • 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、予め作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応する
  • 相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行う

「ハラスメント事後の迅速かつ適切な対応」に関する取組例

取組例1:事実関係の迅速かつ正確な確認

  • 相談窓口の担当者、人事部門または専門の委員会等が、相談者および行為者とされる者の双方から事実関係を確認する
  • 相談者と行為者とされる者の間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできない場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずる
  • 事実関係の確認が困難な場合等において、労働施策総合推進法第30条の6に基づく調停の申請を行う、またはその他中立な第三者機関に紛争処理を委ねる

取組例2:被害者に対する適正な配慮の措置の実施

  • 事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者または事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずる
  • 労働施策総合推進法第30条の6に基づく調停、またはその他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を被害者に対し講ずる

取組例3:行為者に対する適正な措置の実施

  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書におけるセクシュアルハラスメントに関する規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずる
  • 同時に事案の内容や状況に応じて、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪等の措置を講ずる
  • 労働施策総合推進法第30条の6に基づく調停、またはその他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を行為者に対し講ずる

取組例4:再発防止措置の実施

  • パワーハラスメントに係る事業主の方針およびハラスメントに係る言動を行った者について厳正に対処する旨の方針を、社内報、パンフレット、社内HP等広報または啓発のための資料等に改めて掲載し、配布等をする
  • 労働者に対して職場におけるパワーハラスメントに関する意識を啓発するための研修や講習等を改めて実施する

「併せて講ずべき措置」に関する取組例

取組例1:当事者などのプライバシー保護のための措置の実施と周知

  • 相談者・行為者等のプライバシー保護のために必要な事項を予めマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、そのマニュアルに基づき対応する
  • 相談者・行為者等のプライバシー保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行う
  • 相談窓口においては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、社内報、パンフレット、社内HP等広報または啓発のための資料等に掲載し、配布等を行う

取組例2:相談、協力等を理由に不利益な取扱いを行ってはならない旨の定めと周知・啓発

  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に、労働者が職場におけるパワーハラスメントに関し相談をしたこと、事実関係の確認に協力をしたこと等を理由として、その労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発する
  • 社内報、パンフレット、社内HP等広報または啓発のための資料等に、労働者が職場におけるパワーハラスメントに関し相談をしたことや、事実関係の確認に協力をしたこと等を理由として、その労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を記載し、労働者に配布する

繰り返しになりますが、職場におけるパワーハラスメント対策は実施した方がよいというものではなく、必ずやらなければならないものなので、しっかりと確実に実行していきましょう(中小企業も法施行の期日が迫っています)。そのためにも、ハラスメントの内容とその対策についてしっかりと知ることが重要です。

当委員会では、ハラスメント全体についてさらに詳しく解説しているハラスメント情報ハンドブックを無料で配布しています。そしてまずは、現状を知るための無料簡易チェックリストによるチェックを行いましょう。どちらもコチラからダウンロードできます(PC推奨)。

このブログでは働き方改革や雇用対策に関するさまざまな記事を掲載していますので、そちらも是非読んでみてください。職場におけるパワーハラスメント対策に関するご質問等がありましたら、コチラからお気軽にご連絡ください。ご相談ご質問については無料で対応しています。