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中小企業における働き方改革の失敗例と成功例【チェックリスト付き】

働き方改革
働き方改革関連法が完全施行されてから半年近く経ちましたが、対応はお済みでしょうか?
残業時間の上限規制については、対応済みという声が増えてきましたが、他の施策は「まだまだ」という状態が多いようです。
そこで、今回の記事では、働き方改革についての今後の進め方と、既に実施した企業の失敗例・成功例について書きたいと思います。

現在、働き方改革の担当者や企業経営者はこのような悩みをお持ちの様です。

企業経営者(労務担当者)の悩み

  • 中小企業における働き方改革の進め方を知りたい
  • 中小企業での働き方改革の失敗例を知りたい
  • 中小企業での働き方改革の成功例を知りたい

こういった疑問に答えます。

本記事の内容

  • 中小企業における働き方改革の進め方
  • 働き方改革の失敗例【中小企業編】
  • 働き方改革の成功例【中小企業編】

この記事を書いている私は、経営コンサルを10年以上、働き方改革のコンサルも3年以上の実績があります。
また、行政書士でもあるため、労務関係を取扱う社会保険労務士とのコラボも数多く行っています。
法律に沿った内容だけに留まらず、企業の生産性を向上し、収益の増大を目指すコンサルを実施しています。

中小企業における働き方改革の進め方

働き方改革関連法において、さまざまな施策が期限を設けて施行されています。時間外労働の条件規制や年次有給休暇の時季指定など、既に適用が全面的に開始しているものもありますので、まずは緊急性の高いものから開始していきましょう。この項でお伝えしたいのは下記の通りです。

  • 中小企業の定義
  • 今すぐ対応が必要な施策
  • 今後適用が始まる施策

中小企業の定義

働き方改革関連法においては、中小企業(個人事業を含む)か大企業かによって施行開始日が異なるのため、中小企業の定義が大切になってきます(尚、法律によって定義は変わります)。
中小企業に該当するかどうかは、業種ごとに、資本金の額または出資総額または、常時使用する労働者数によって下記の通り規定されていますが、個人事業主や医療法人など出資金の概念がない場合は、労働者数のみで判断します。自社がどこに定義されているか再確認しましょう。

 業種 資本金の額
または出資総額
常時使用する
労働者数
 小売業 5000万円以下 50人以下
 サービス業 5000万円以下 100人以下
 卸売業 1億円以下 100人以下
 その他
(製造業・建設業・運輸業、
その他上記以外の業種)
3億円以下 300人以下

今すぐ対応が必要な施策

今すぐに対応が必要な働き方改革の施策は、下記の通りです。

1)年次有給休暇の時季指定
10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について毎年時季を指定して与える義務
2)高度プロフェッショナル制度(該当企業のみ)
高度プロフェッショナル制度を創設し、対象となる労働者への健康確保措置を強化
3)フレックスタイム制の見直し(該当企業のみ)
フレックスタイム制の「清算期間」の上限を1か月から3か月に延長
4)労働時間の把握
労働時間の状況を省令で定める方法(より客観的な方法)により把握する義務
5)産業医・産業保健機能の強化
産業医等の業務を適切に行うための情報提供など、産業医・産業保健機能の強化
6)時間外労働の上限規制
時間外労働の上限について、月45時間年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間単月100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間(休日労働を含む)を限度に設定(一部業種に猶予措置あり)

各々の施策の詳細については、他の記事を参照してください。どれも既に施行が開始していますので、直ちに対応する必要があります(一部罰則あり)。

今後適用が始まる施策

これから適用が始まる施策は多くありません。雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(いわゆる同一労働同一賃金)と、60時間を超える時間外労働に対する割増賃金の規定のみです。

1)雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
これは「同一労働同一賃金」と総称して呼ばれるもので、非正規雇用労働者の待遇に関するものです。現状、非正規雇用労働者を雇用していなければ、対応する必要はありません。尚、中小企業におけるパートタイム労働法、労働契約法の改正規定の適用日は令和3年4月1日です。

  • 不合理な待遇差を解消するための規定の整備(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)
    短時間・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止、詳細なガイドライン規定等の整備
  • 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)
    短時間・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明義務

尚、上記2項について、行政による履行確保措置及び行政ADR(裁判外紛争解決手続)が整備されます。

2)60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の変更
月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金(50%以上)の、中小企業への猶予措置の廃止(令和5年4月1日施行)

さて、中小企業においては、働き方改革を進めるに当たって若干の注意点があります。
それは、企業規模が小さいが故に、良くも悪くも施策が社員からも丸見えになりやすい、ということです。
誰それが残業の多いのを注意された、有給休暇が決めた通りに取れなくて問題になっている、などの噂話がすぐに全社に広まりやすく(特にネガティブな内容ほど)、結果的に社員のモチベーションが低下し、協力が得られなくなってしまい、思うような結果が得られません。

そのため、中小企業においては、何事もオープンにして、全社で働き方改革に取り組んでしっかりと成功させる、ということを社員全員で共有する必要があります。
上から言われたからやる、という姿勢ではなく、各部署や社員一人ひとりが率先して実施できるように、時には成功報酬を用意するなどの検討もしましょう。

働き方改革の失敗例【中小企業編】

実は、働き方改革については、失敗例が数多く明らかになっています。残念ながら、私が携わった企業でも失敗がありました。ここでは、その典型的な失敗例について、以下のものを見ていきましょう。

  • とにかく残業禁止
  • モチベーション低下
  • 賃金格差拡大で紛糾

とにかく残業禁止

創業社長が統括しているトップダウン型の営業会社などによく見られる失敗例です。
時間外労働時間の上限規制について、あれこれと細かい決まりを作るのではなく、ある日突然、とにかく残業を禁止してしまう、という例です。

今まで残業が発生していたさまざまな原因を無視して、労働時間が制限された結果、業務の質が落ちたり、社員が皆忙しく決裁などに逆に時間がかかってしまったり、社員のモチベーションが低下して売上の減少や社員の離職が増加して、ますます繁忙度が上がる悪循環に陥ります。

モチベーション低下

先程の、とにかく残業禁止と同様に、上司など会社側の理解が低くて、社員のモチベーションが低下する失敗例です。

理由も告げられず、「法律で決まったことだから」「上からの指示だから」と言われても、はいそうですか、と何でも従うほど人間は単純ではありません。本来働き方改革にはきちんとした目的があって(これについては別の記事に詳細に書きたいと思います)、ちゃんと実施すれば労働生産性の向上やそれによる収益の向上といった大きなメリットがあるのですが、そこが明確にされなければ、当然社員の協力は得られません。

賃金格差拡大で紛糾

一般社員は残業の抑制によって残業代が減少し、給与総額が目に見えて減少しています。それに引き換え、課長以上の管理職は元々残業代が支給されていなかったため、給与総額に変化はありません。残業抑制前に比べてそれほど業務負担は変わらないのに、管理職と一般社員の賃金格差が拡大して、その点を会社側に指摘しても、評価制度そのものが変わった訳ではないため、受け入れてもらえません。

結果的に一般社員は面白くないのですが、課長など直属の上司が悪いということでもないため、怒りの持っていき場がなく、業務レベルの低下や、最終的に一斉退職などの過激な行動につながってしまいます。

働き方改革の成功例【中小企業編】

ここまで読んでいただいた方には、失敗と成功の分かれ道はだいたい想像がついたと思いますが、典型的な成功例として以下のものを見ていきましょう。

  • マニュアル化と外注化
  • 思った以上に多かったムダ
  • 慌てて人材募集

マニュアル化と外注化

働き方改革に限らず、社内改革の第一歩は、現状の把握です。社員一人ひとりが行っている業務を詳細に分析していくと、誰がやっても同じ処理になる定型業務が結構あるものです。ところがそれが属人化してしまうと、他の社員には何をどうしているのか分からず、業務の共有や一般化が困難になってしまいます。
分析によって、Excelのマクロ処理やVBAや、RPAなどのソフトによる機械化が可能な業務も意外と多く、また、それほど複雑な業務でなければ、外注してしまう、ということも成功の要因になっているようです。

いずれにせよ、こういった分析も業務の効率化につながるので、担当業務のスリム化による残業時間の削減に大いに効果があります。また、マニュアル化もしっかりできれば、担当変更による引継や教育などの時間も減少できます。

思った以上に多かったムダ

分析を通して判明するのが、ムダの数々。重複業務や不要な決裁、誰も読まない報告書、厳格な社内処理等々…。

それほど規模の大きくない企業なのに、大企業並みの部署数があった企業は、思い切って部署のスリム化で役職を大きく減らしました。人員の直間比率(収益に直接関係ある人材と間接業務の人材との比率)の見直しなど、異動(担当業務の変更)だけで済む施策もありました。

とにかくムダの発見と排除、これが成功への秘訣であることは間違いありません。

慌てて人材募集

働き方改革は社内改革。各々の施策をよく検討して実施した結果、ムダな業務がなくなって、残業はほぼなくなり、生産性が向上して売上が少し伸びました。残業代が減少していたため、結果的に利益が増加しました。

会社側は報奨として賞与を増額、ベースアップ(賃上げ)も行いました。残業がほぼなくなったのに、年収が増加した社員はモチベーションが向上し、さらなる売上増を引き起こします。それにつれ、業務量が増大しましたが、残業をできるだけしない方針の下、作成したマニュアルの実験も兼ねて人員増に踏み切ることに。

人事労務担当者は思ったより早い結果に慌てて人材募集を行い、併せて募集専用のホームページを発注しました。改革の進捗に併せて申請し受領した助成金も合計でかなりの金額になったため、それを社員に還元すべく、創業周年イベントを兼ねて10年振りに社内旅行を計画(残念ながらコロナ禍のため特別賞与に変更)、ここまで全部で丸3年かかっていません。出来過ぎのような(私が聞いてもちょっと驚いた)事例でした。

繰り返しになりますが、まだまだ時間はありますので、働き方改革の施策を一つずつ確実に実行していきましょう。
そのためにも、まずは働き方改革の内容をしっかりと知ることが重要です。
まずは、現状を知るためにも無料簡易チェックリストによるチェックを行いましょう。
コチラからダウンロードできます(PC推奨)。

このブログでは働き方改革や雇用対策に関するさまざまな記事を掲載していますので、そちらも是非読んでみてください。もし、ご質問等がありましたら、お気軽にご連絡ください。